導入部分
「全部壊す」――死柄木弔のこの言葉が、ヒーロー社会の根幹を揺るがす災厄の始まりでした。
19巻から30巻にかけての区間は、ヒロアカの物語が最もダイナミックに展開する部分です。主人公デク側だけでなく、ヴィラン側の群像劇が本格的に描かれ、死柄木弔の壮絶な過去、異能解放軍との激突、約11万人の超常解放戦線結成、そしてヒーロー全員が出動する全面戦争へ。ヒーロー社会そのものが崩壊の危機に瀕する、圧倒的なスケールの物語が展開されます。
この記事でわかること
- プロヒーロー編とエンデヴァーの新No.1としての苦悩
- ヴィランアカデミア(敵連合の群像劇)
- 死柄木弔の過去と個性「崩壊」の覚醒
- 異能解放軍との全面衝突と超常解放戦線の結成
- ホークスの二重スパイ活動
- 全面戦争の全貌と荼毘の正体暴露
読了時間:約15分 | おすすめ度:★★★★★
基本情報
【超常解放戦線・全面戦争篇 基本情報】
- 収録:単行本19巻〜30巻(第163話〜第296話)
- 連載期間:2018年〜2021年(週刊少年ジャンプ)
- 作者:堀越耕平
- 主要キャラ:緑谷出久、死柄木弔、エンデヴァー、ホークス、荼毘、トガヒミコ、トゥワイス
- 核となるテーマ:ヴィランの「正義」、社会の歪み、信頼の崩壊
- 世界設定:エンデヴァーのNo.1就任、異能解放軍、超常解放戦線
あらすじ
ここから先、超常解放戦線・全面戦争篇の重大なネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
プロヒーロー編――新No.1エンデヴァー
オールマイト引退後、ヒーローランキング1位となったのはエンデヴァー。しかし彼には「平和の象徴」としてのカリスマがない。かつて家族を道具として扱い、息子・焦凍を個性婚の産物として育てた過去。エンデヴァーは自らの罪を背負いながら、新たなNo.1として歩み始めます。
ハイエンド脳無との戦いでは、エンデヴァーは満身創痍になりながらも勝利を収めます。顔に大きな傷を負いながらも拳を掲げる姿に、人々は新たな象徴の可能性を見出します。しかしそのすぐ傍で、No.2ヒーロー・ホークスは不穏な笑みを浮かべていました。
ホークスの個性は「剛翼」。背中の赤い翼の羽根を自在に操り、感知・攻撃・救助に活用する万能型の個性です。そしてホークスはヒーロー公安委員会の密命を受け、敵連合に二重スパイとして潜入していたのです。
文化祭と壊理の笑顔
一方、雄英では文化祭が開催されます。デクたちA組はバンド演奏とダンスのステージを企画。ヴィラン・ジェントル・クリミナルが文化祭を狙って襲来しますが、デクが撃退します。
この文化祭で最も重要なのは、壊理が初めて笑顔を見せる場面です。オーバーホールに虐待され、笑い方すら忘れていた少女が、A組のステージを見て心から笑う。ミリオが命がけで守り、デクが救い出した少女の笑顔。これこそ、ヒーローが戦う理由です。
ヴィランアカデミア――敵連合の物語
19巻からは「ヴィランアカデミア」と呼ばれる、敵連合メンバーの群像劇が展開されます。堀越耕平がヴィラン側を主役として描くこの章は、ヒロアカの中でも特に評価の高いパートです。
荼毘、トガヒミコ、トゥワイス、スピナー、Mr.コンプレス。それぞれが社会からはじき出され、居場所を失った人間たち。彼らにとって敵連合は「初めてのコミュニティ」でした。
特に重要なのがトゥワイスの物語です。個性「二倍」は、あらゆるものを複製する能力。しかしかつて自分自身を複製しすぎた結果、「本物の自分がどれなのか」分からなくなるトラウマを抱えています。仲間への愛着と自己への疑念。トゥワイスの内面の葛藤は、ヴィラン側にも感情移入させる力を持っています。
異能解放軍との激突
敵連合は新たな敵と対峙します。リ・デストロ率いる「異能解放軍」。個性の自由な使用を求める思想団体で、約11万6000人もの構成員を擁する巨大組織です。
異能解放軍は敵連合を壊滅させるために全面戦争を仕掛けます。圧倒的な数の差。しかしこの窮地で、死柄木弔の個性が覚醒します。
死柄木弔の過去――志村転弧
死柄木弔の本名は「志村転弧(しむら てんこ)」。なんとオールマイトの師匠・志村菜奈の孫でした。
幼い転弧はヒーローに憧れる普通の子供でした。しかし父・志村弧太郎はヒーローだった母・菜奈に捨てられた過去から、「ヒーロー」という言葉を嫌い、転弧の夢を否定し続けました。
ある日、個性「崩壊」が暴走。転弧は自分の家族全員を崩壊させてしまいます。母、姉、祖父母、そして最後に父。誰にも助けてもらえず、路上で崩れ落ちた少年を拾ったのが、オール・フォー・ワンでした。
「助けて」と叫んだのに、誰も来なかった。 この絶望が、死柄木弔を形作りました。ヒーロー社会が見捨てた少年。彼にとってヒーローは「救けてくれなかった者たち」なのです。
個性の覚醒により「崩壊」が進化。触れたものだけでなく、触れたものに繋がるすべてを連鎖的に崩壊させる力を手に入れた死柄木は、リ・デストロを圧倒。異能解放軍を敵連合に取り込み、約11万人の超巨大組織「超常解放戦線」を結成します。
ホークスの決断
ホークスは超常解放戦線に潜入し、内部情報をヒーロー側に流していました。しかしトゥワイスとの間に芽生えた友情が、ホークスを苦しめます。
トゥワイスはホークスを「友達」と呼び、心を開いていました。しかしホークスはスパイであり、トゥワイスの個性「二倍」は全面戦争で使われれば壊滅的な被害を出す。ホークスは最終的にトゥワイスを殺害する決断を下します。
「もし生まれ変わったら、次は普通に出会いたい」
ホークスの涙とトゥワイスの死は、ヒロアカで最も胸が締め付けられる場面のひとつです。正義のために友を殺す。ヒーローの業の深さが凝縮されています。
全面戦争――ヒーロー全員出動
ホークスの情報をもとに、ヒーロー側は超常解放戦線への先制攻撃を決行します。脳無の製造元であるドクター(殻木球大)の研究施設「蛇腔病院」と、超常解放戦線が集結する「群訝山荘」。二手に分かれたヒーローが同時襲撃を行います。
蛇腔病院では、眠り続ける死柄木弔の肉体がオール・フォー・ワンの改造を受け、75%の完成度に達していました。相澤先生が個性「抹消」で死柄木の個性を封じますが、死柄木は覚醒。相澤先生の視線を逸らした一瞬で「崩壊」が発動し、蛇腔病院とその周辺が一瞬にして崩壊。多数のヒーローが犠牲になります。
デクはワン・フォー・オールの先代の個性「黒鞭」を発動し、覚醒した死柄木と対峙。しかし死柄木はオール・フォー・ワンの個性をも宿しており、その力はデクをはるかに上回っていました。エンデヴァー、爆豪、轟ら参戦のヒーローたちも苦戦を強いられます。
荼毘の正体暴露
全面戦争の最中、群訝山荘で衝撃の事実が明かされます。荼毘がテレビ中継を通じて、自らの正体を世間に公表したのです。
「俺の本名は轟燈矢。エンデヴァーの息子だ」
荼毘こと轟燈矢は、エンデヴァーの長男。幼少期に個性が暴走し、死亡したとされていました。しかし実際にはオール・フォー・ワンに救われ、エンデヴァーと焦凍への憎悪を胸に「荼毘」として生きてきたのです。
エンデヴァーの個性婚、家庭内暴力、長男の「死」。No.1ヒーローの暗部が全国民の前に晒され、ヒーロー社会への信頼は地に落ちました。エンデヴァーは戦意を失い、ヒーロー側は総崩れの危機に陥ります。
爆豪の覚悟
全面戦争で、爆豪はデクを庇って死柄木の攻撃を受け、致命的な負傷を負います。
「体が勝手に動いた」
かつてデクが爆豪を助けた時と同じ言葉。いつも見下していた相手を、爆豪は身体で守った。この一言が、爆豪の成長を何よりも雄弁に物語っています。
エッジショットが自身の体を使って爆豪の心臓を応急処置し、爆豪は辛くも一命を取り留めます。
全面戦争の結末
全面戦争は甚大な被害を残して終結。死柄木は退却し、ギガントマキアは鎮圧されますが、ヒーロー社会が受けた打撃は計り知れないものでした。
多数のヒーローが死傷し、荼毘の暴露によりヒーローへの信頼は失墜。街は荒廃し、人々はヒーローを頼れなくなります。プロヒーローの中にも、プレッシャーに耐えかねて引退する者が続出。社会は急速に不安定化していきます。
この編の見どころ
ヴィランの群像劇
ヴィランアカデミアで描かれる敵連合メンバーの物語は、ヒロアカの中でも特に秀逸な部分です。社会からはじき出された人間たちが見つけた居場所としての「敵連合」。彼らを単なる悪役ではなく、社会の被害者としても描く視点が、物語に深みを与えています。
死柄木の過去
「助けて」と叫んだのに誰も来なかった少年。ヒーロー社会の光が届かなかった場所で生まれたヴィラン。死柄木弔の過去が明かされることで、「ヒーロー社会は本当に正しいのか」という根本的な問いが浮かび上がります。
ホークスのジレンマ
二重スパイとしてヴィランに潜入し、友情を築いた相手を自ら殺すという残酷な選択。ホークスの物語は、ヒーローという職業の過酷さと、正義のために犠牲にするものの重さを突きつけます。
荼毘の正体暴露
No.1ヒーローの息子がヴィランだった。この暴露がヒーロー社会全体を揺るがす展開は、堀越耕平が序盤からエンデヴァーの過去として丁寧に積み上げてきた伏線の集大成です。
印象的な名シーン・名言
エンデヴァーの拳(20巻)
ハイエンド脳無との死闘後、顔に大傷を負いながら拳を掲げるエンデヴァー。「もう俺を見ろ!」という叫びは、新No.1としての覚悟の表明であり、同時に家族への懺悔でもあります。
壊理の笑顔(20巻)
文化祭のステージで初めて心から笑う壊理。この一瞬のためにデクもミリオも戦った。ヒーローが守りたかったものが、ここにある。読者の涙を誘うヒロアカ屈指の名シーンです。
死柄木の覚醒(25巻)
家族を崩壊させた記憶を受け入れ、「全部壊す」と宣言する死柄木。個性が進化し、触れたものすべてが連鎖崩壊する恐るべき力を手に入れる。ヴィランの覚醒シーンでありながら、悲しみに満ちた場面です。
トゥワイスの死(27巻)
ホークスに殺されるトゥワイス。最後の力でトガヒミコに「二倍」を使い、分身を生み出す。「トガちゃんに、悲しい顔させちまった」。仲間を想う心を最後まで失わなかったヴィランの最期。
爆豪の「体が勝手に動いた」(29巻)
デクと同じ言葉を口にしてデクを庇う爆豪。かつてのデクの行動を「意味わかんなかった」と言っていた爆豪が、同じ行動をとる。二人の関係の深化を象徴する、物語全体の中でも最重要な場面のひとつです。
「俺の本名は轟燈矢」(29巻)
荼毘の正体暴露。テレビ中継を通じてエンデヴァーの罪を告発する燈矢の姿は、ヒーロー社会の闇を白日の下に晒す衝撃の瞬間でした。
キャラクター解説
死柄木弔(しがらき とむら)/ 志村転弧
本名・志村転弧。オールマイトの師匠・志村菜奈の孫。幼少期に個性「崩壊」が暴走し、家族全員を殺してしまった過去を持ちます。オール・フォー・ワンに育てられ、ヒーロー社会への破壊衝動を抱くヴィラン。全面戦争で個性が覚醒し、オール・フォー・ワンの個性をも宿す存在へと変貌しました。
ホークス / 鷹見啓悟(たかみ けいご)
個性「剛翼」。No.2ヒーローにして、ヒーロー公安委員会の密命で超常解放戦線に潜入した二重スパイ。幼い頃にヒーローに救われた経験から、「ヒーローが暇になれる世界」を理想とします。トゥワイスの殺害は彼の心に深い傷を残しました。
荼毘(だび)/ 轟燈矢(とどろき とうや)
個性「蒼炎」。エンデヴァーの長男であり、幼少期の個性暴走により死亡したとされていた人物。実際にはオール・フォー・ワンに救われ、エンデヴァーへの憎悪を原動力にヴィランとして活動。自らの炎に身体が耐えきれず、全身に火傷の跡があります。
トゥワイス / 分倍河原仁(ぶばいがわら じん)
個性「二倍」。あらゆるものを複製できますが、かつて自分自身を複製しすぎた結果、自己同一性の危機に陥ったトラウマを抱えます。敵連合の中で初めて「仲間」を得た孤独な人間。ホークスに殺され、敵連合にとって取り返しのつかない損失となりました。
トガヒミコ
個性「変身」。血液を摂取することでその人物に変身できます。「好きな人になりたい」という歪んだ愛情表現が行動原理。トゥワイスの死後、その血を飲むことでトゥワイスの「二倍」の個性も一時的に使えるようになります。
リ・デストロ / 四ツ橋力也(よつはし りきや)
異能解放軍のリーダー。個性「ストレス」。溜まったストレスを身体能力に変換する力を持ちます。覚醒した死柄木に敗北し、超常解放戦線の傘下に入ります。
まとめ
19巻から30巻にかけての超常解放戦線・全面戦争篇は、ヒロアカが「少年漫画」の枠を超えて社会的な物語へと進化した区間です。
ヴィラン側の群像劇を丁寧に描くことで、「敵にもそれぞれの事情がある」という深みを持たせた堀越耕平の手腕は見事というほかありません。死柄木弔の過去、トゥワイスの死、荼毘の正体暴露。どれもが読者の感情を激しく揺さぶる展開でした。
全面戦争の結果、ヒーロー社会は崩壊の危機に瀕します。プロヒーローへの信頼は失われ、街は荒廃し、人々は絶望の中に取り残される。この状況でデクがとる行動が、最終決戦篇の核心となります。
続く最終決戦篇では、単身でヴィランと戦い続ける「ダークデク」の孤独な戦い、そして全てを賭けた最終決戦が描かれます。
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