導入部分
「次は君だ」――オールマイトが最後の力を振り絞り、ワン・フォー・オールの灯火を託す。テレビ中継で全国民が見守る中、「平和の象徴」は終わりを告げました。
11巻から18巻に至るこの区間は、ヒロアカにとって最大の転換点です。オールマイトとオール・フォー・ワンの宿命的な頂上決戦、爆豪救出作戦、仮免試験を経て、指定ヴィラン団体・死穢八斎會との戦いへ。少女・壊理を救うために命を懸ける若きヒーローたちの姿は、この作品の真骨頂と言えるでしょう。
この記事でわかること
- 神野の悪夢――オールマイトvsオール・フォー・ワン
- 爆豪救出作戦の顛末
- 雄英の寮生活と仮免試験
- デクと爆豪の2度目の決闘
- 死穢八斎會・オーバーホールとの壮絶な戦い
- 通形ミリオの犠牲とサー・ナイトアイの死
読了時間:約15分 | おすすめ度:★★★★★
基本情報
【神野・オーバーホール篇 基本情報】
- 収録:単行本11巻〜18巻(第84話〜第162話)
- 連載期間:2016年〜2018年(週刊少年ジャンプ)
- 作者:堀越耕平
- 主要キャラ:緑谷出久、オールマイト、爆豪勝己、通形ミリオ、サー・ナイトアイ、壊理、オーバーホール
- 核となるテーマ:象徴の継承、予知された未来への抗い、救けるということ
- 世界設定:神野区、雄英寮、死穢八斎會アジト
あらすじ
ここから先、神野・オーバーホール篇の重大なネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
神野の悪夢――爆豪救出作戦
林間合宿で敵連合に攫われた爆豪勝己。警察とプロヒーローが捜索を進める一方で、デク、轟、切島鋭児郎、飯田、そして八百万百たちは独自に救出作戦を敢行します。
ヒーロー活動は免許制であり、学生が勝手に行動することは違法行為。それでもデクたちは「自分たちにできること」を選びました。八百万が追跡装置を作成し、敵のアジトを特定。「戦うのではなく、救出だけを行う」という条件で作戦を実行します。
しかし事態は想定を超えて動いていました。敵連合のアジトに集結していたのは、死柄木弔だけではなかった。その背後に控えていたのが、「すべての悪の頂点」――オール・フォー・ワンです。
オールマイトvsオール・フォー・ワン
オール・フォー・ワン。個性「オール・フォー・ワン」は、他者の個性を奪い、自分のものにする、あるいは他者に与える能力。ワン・フォー・オールは元々、オール・フォー・ワンの弟に「力のストック」の個性を与えたことで誕生したものでした。つまりオールマイトとオール・フォー・ワンは、世代を超えた因縁で結ばれた宿敵なのです。
神野区にオール・フォー・ワンが出現し、プロヒーローたちを圧倒。ベストジーニスト、エンデヴァー、エッジショットといったトップヒーローたちが束になってもかないません。
そこにオールマイトが駆けつけます。しかしワン・フォー・オールの力はほとんど残っていない。それでもオールマイトは戦う。「平和の象徴」として、最後の戦いに挑むのです。
一方、デクたちは爆豪を救出するために動きます。切島が爆豪に手を差し伸べ、爆豪は自らの意志でその手を掴みました。「仲間に救われた」のではなく「自分の判断で脱出した」。この場面は爆豪のプライドと仲間への信頼が両立した、繊細な描写でした。
「次は君だ」
オールマイトとオール・フォー・ワンの一騎討ち。テレビ中継で全国民が見守る中、オールマイトは残された力のすべてを使い果たします。最後の一撃「ユナイテッド・ステイツ・オブ・スマッシュ」でオール・フォー・ワンを打倒。
しかし戦闘中にオールマイトの真実の姿(痩せ細った姿)がテレビに映し出されてしまいます。「平和の象徴」の正体を知った国民の動揺。そしてオールマイトはカメラの前で、デクに向けて指を向けます。
「次は君だ」
ワン・フォー・オールの残り火は完全に消え、オールマイトはもう二度とヒーローとして戦えない身体になりました。「平和の象徴」の時代は終わり、新たな時代が幕を開けます。
寮生活と仮免試験
オールマイト引退後、生徒の安全確保のため雄英高校は全寮制に移行します。1-Aの寮生活が始まり、クラスメイトの日常が描かれる中、デクたちは「プロヒーロー仮免許」の取得を目指します。
仮免試験では傑物学園や士傑高校など他校の生徒との対決も。デクはワン・フォー・オールの出力を8%まで引き上げ、新技「シュートスタイル」(蹴り技主体のスタイル)を開発。腕ではなく脚を使うことで、壊れやすい腕を温存する戦い方です。
仮免試験は一次が「ターゲットの撃破」、二次が「要救助者の救出」。デクたちは仮免許を取得しますが、爆豪と轟は不合格に。特に爆豪は「人を救ける」ということへの意識が足りなかったことが敗因となりました。
デクvs爆豪 ラウンド2
仮免試験後、爆豪はデクを呼び出し、2度目の決闘を挑みます。幼少期からの疑問、USJ事件でのオールマイト、神野区での「次は君だ」。爆豪はすべてを見て、オールマイトの力がデクに受け継がれたことを確信していました。
「なんでお前なんだよ……」
爆豪の叫びは嫉妬であり、自問でもありました。自分のほうが強いのに、なぜオールマイトはデクを選んだのか。この戦いの末、オールマイトが駆けつけ、二人にワン・フォー・オールの秘密を明かします。
ここから爆豪はデクの秘密を共有する「共犯者」となり、二人の関係は新たなフェーズに入ります。ライバルであり、互いを高め合う存在へ。
ヒーローインターン――死穢八斎會との遭遇
仮免取得後、デクはオールマイトの元サイドキック・サー・ナイトアイの事務所でインターンを開始します。サー・ナイトアイの個性は「予知」。触れた相手の未来を一時間分見ることができる強力な個性です。
しかしサー・ナイトアイは、かつてオールマイトの未来を予知し、「凄惨な死」を見てしまったことがあります。オールマイトとの間には、ワン・フォー・オールの後継者を巡る確執がありました。サー・ナイトアイが推薦していたのは、雄英3年の通形ミリオだったのです。
通形ミリオ――個性「透過」。身体を物質に透過させる能力を持ち、サー・ナイトアイから「オールマイトに最も近い男」と評される、雄英ビッグ3の一人。デクとミリオは巡回中に、一人の幼い少女と出会います。
壊理(えり)――その腕には包帯が巻かれ、全身に傷跡がありました。彼女を追いかけてきたのが、指定ヴィラン団体・死穢八斎會の若頭、治崎廻(ちさき かい)、ヴィラン名・オーバーホール。
オーバーホールの野望
オーバーホールの個性は「オーバーホール」。触れたものを分解し、再構築する力。人体すらも分解・再構築でき、他者と融合することも可能な恐るべき個性です。
オーバーホールは「個性」そのものを病気とみなし、壊理の個性を利用して「個性を消す弾丸」を開発していました。壊理の個性「巻き戻し」は、生物を以前の状態に巻き戻す力。オーバーホールは壊理の身体から血液や細胞を採取し、弾丸の材料としていたのです。
幼い少女が実験材料として虐待されている。この事実を知ったデクとミリオは、壊理を救出するための作戦に参加します。
死穢八斎會突入作戦
サー・ナイトアイの指揮の下、プロヒーロー、インターン生、警察による合同作戦が決行されます。死穢八斎會のアジトに突入するヒーローたち。しかし内部は迷宮のように入り組み、構成員たちとの激戦が待ち受けていました。
切島鋭児郎はファットガムとともに鉄砲玉と戦い、「硬化」の限界を超えた「烈怒頼雄斗(レッドライオット)アンブレイカブル」を発動。サンイーターこと天喰環は三人の敵を一人で相手取り、自身の個性「再現」の可能性を最大限に発揮します。
ルミリオンの犠牲
最深部でオーバーホールと対峙したのは通形ミリオでした。ミリオは「透過」の個性を駆使してオーバーホールを圧倒。しかしオーバーホールは壊理を盾にし、さらに「個性を消す弾丸」をミリオに命中させます。
個性を失ったミリオ。それでも彼は無個性の状態で壊理を守り続けました。殴られ、切り刻まれながらも壊理の前に立ちはだかるミリオの姿は、ヒロアカ全編を通しても最も壮絶で美しい場面のひとつです。
「大丈夫!君はもうヒーローに守られてるんだ!」
個性がなくてもヒーローであり続ける。それはかつてのデクがオールマイトに見出された資質そのものでした。
デクvsオーバーホール
デクが最深部に到達し、オーバーホールとの最終決戦が始まります。オーバーホールは部下の音本と融合し、巨大な怪物と化します。通常の戦い方では太刀打ちできない圧倒的なパワー。
ここで壊理が立ち上がります。壊理の「巻き戻し」の個性をデクが受け止めることで、ワン・フォー・オール100%のフルパワーを連続で使い続けることが可能に。壊理の「巻き戻し」がデクの身体の損傷を即座に回復させるのです。
デクは壊理を背中に乗せ、ワン・フォー・オール100%の「無限100%」でオーバーホールを圧倒。空を駆け、神話的なスケールの戦いが繰り広げられます。
サー・ナイトアイの最期
オーバーホールは撃破され、壊理は無事に保護されました。しかしこの戦いで、サー・ナイトアイは致命傷を負います。
サー・ナイトアイが予知したオールマイトの未来は「凄惨な死」でした。しかし神野区でオールマイトは生き延びた。「予知された未来は変えられる」のか。サー・ナイトアイは最期にデクに言います。
「君が……未来を変えたんだ」
未来は決まったものではない。人々の想いが、エネルギーが、未来を変える力になる。サー・ナイトアイはその確信を胸に息を引き取りました。
この編の見どころ
オールマイト最後の戦い
神野区でのオールマイトvsオール・フォー・ワンは、ヒロアカ最大の見せ場のひとつです。残り火を使い切ってなお戦い続けるオールマイトの姿。「平和の象徴」としての重圧と、次世代へ託す想い。そして全国民が見守る中での「次は君だ」。この場面がヒロアカの物語全体の方向性を決定づけました。
ミリオの無個性での戦い
個性を失ってなお壊理を守り続けるミリオの姿は、「ヒーローとは個性ではなく、精神である」というテーマを体現しています。この場面はデクの物語とも深くリンクしており、無個性であることの意味を改めて問い直します。
壊理というキャラクター
虐待され、自分の存在が人を不幸にすると信じ込まされた少女。壊理の救出は単なるバトルの目標ではなく、「この子の笑顔を取り戻す」という感情的な核心を持っています。のちに壊理が文化祭で笑顔を見せる場面への伏線でもあります。
印象的な名シーン・名言
「次は君だ」(11巻)
オールマイトが最後の力を使い果たした後、カメラの前でデクに向けて指を向ける。全国民が見守る中での継承の宣言。この一言が、物語の新章の幕開けです。
爆豪の「なんでお前なんだよ」(13巻)
爆豪が初めて本音をさらけ出した瞬間。嫉妬、焦り、敗北感。爆豪の中にあった複雑な感情が爆発するこの場面は、彼を単なるライバルから、作品の核心を担うキャラクターへと昇格させました。
ミリオの「大丈夫!」(17巻)
個性を失い、満身創痍でありながら壊理の前に立ちはだかるミリオ。「大丈夫!君はもうヒーローに守られてるんだ!」という言葉は、ヒーローの本質そのものです。
デク100%の空中戦(18巻)
壊理を背負い、ワン・フォー・オール100%でオーバーホールと空中で激突するデク。通常なら身体が壊れるはずの100%を連続使用できるのは壊理の力があればこそ。この共闘は「救う者と救われる者」の境界が溶ける美しい瞬間です。
サー・ナイトアイの最期(18巻)
「未来を変えたのは、君たちの想いのエネルギーだ」。予知された未来を覆した事実を肯定し、未来への希望を遺して逝く。彼の死は悲しいですが、物語に「未来は変えられる」という確信を残しました。
キャラクター解説
オール・フォー・ワン
個性「オール・フォー・ワン」。他者の個性を奪い、自分のものにする、あるいは他者に与える力を持つ「すべての悪の頂点」。ワン・フォー・オールの生みの親にして宿敵。神野区でオールマイトに敗北し投獄されますが、その影響力は健在です。
通形ミリオ(とおがた みりお)/ ルミリオン
個性「透過」。身体をあらゆる物質に透過させる能力。使い方次第では欠陥個性になりかねない力を、徹底的な鍛錬で最強レベルにまで昇華しました。サー・ナイトアイから「オールマイトに最も近い男」と評される雄英ビッグ3の一人。壊理を救うために個性を失いますが、その精神は折れませんでした。
サー・ナイトアイ / 佐々木未来(ささき みらい)
個性「予知」。触れた相手の未来を一時間分映像として見ることができます。オールマイトの元サイドキックで、ワン・フォー・オールの後継者としてミリオを推していました。死穢八斎會との戦いで致命傷を負い死亡。
オーバーホール / 治崎廻(ちさき かい)
個性「オーバーホール」。触れたものを分解し、再構築する能力。死穢八斎會の若頭として組織の再建を目指し、壊理の個性を利用した「個性破壊弾」の開発を企てました。個性を「病気」と捉える独自の思想を持つ危険なヴィラン。
壊理(えり)
個性「巻き戻し」。触れた生物を以前の状態に巻き戻す力。オーバーホールに利用され続けた幼い少女。デクとミリオによって救出された後は雄英で保護されます。
まとめ
神野・オーバーホール篇は、ヒロアカの「第一部完結」とも言える、物語最大のターニングポイントです。
オールマイトの引退により「平和の象徴なき時代」が幕を開け、デクたちの世代が本格的にヒーロー社会の最前線に立つことになります。そしてオーバーホールとの戦いでは、壊理という一人の少女を救うために、ミリオが個性を失い、サー・ナイトアイが命を落としました。「救ける」という行為の重さと尊さが、かつてないほど深く描かれた区間です。
デクとオール・フォー・ワンの因縁、爆豪とデクの関係の変化、そしてデクのワン・フォー・オールに眠る歴代継承者の個性。物語はさらなる深みへと向かっていきます。
続く超常解放戦線・全面戦争篇では、ヴィラン側の物語が本格的に語られ、死柄木弔の恐るべき過去が明らかになります。
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