導入部分
番吾で王翦が大敗し、桓騎も失った秦国。二度の連敗で国の勢いが止まったかに見えた、その矢先。昌平君が満を持して献策した壮大な戦略が、中華統一への歯車を再び動かし始めます。
キングダム韓攻略編は、秦が初めて戦国七雄の一国を滅ぼすという歴史的瞬間を描く章です。信率いる飛信隊六万と騰軍十万が韓に侵攻し、首都・新鄭を目指す。史実において韓は秦に最初に滅ぼされた国であり、この戦いが中華統一の第一歩として大きな意味を持ちます。
この記事でわかること
- 番吾の大敗からの立て直しと昌平君の「三つの柱」
- 韓への侵攻開始と南陽攻略
- 栄京平原の決戦と飛信隊の活躍
- 韓の滅亡と「国か民か」の問い
- 78巻から始まる趙攻略への展望
読了時間:約15分 | おすすめ度:★★★★☆
基本情報
【韓攻略編 基本情報】
- 収録:単行本73巻〜78巻(連載中)
- 連載:週刊ヤングジャンプ(集英社)
- 作者:原泰久
- 累計発行部数:1億2000万部突破(2026年3月時点、全78巻)
- 受賞歴:第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞(2013年)
- 主要キャラ:信(李信)、嬴政、騰、昌平君、羌瘣、韓王安
- 核となるテーマ:統一戦争の始まり、国家と民の関係、征服の意味
- 重要な舞台:南陽、栄京平原、新鄭(韓の首都)
- 史実との対応:紀元前230年、韓の滅亡
あらすじ
ここから先、韓攻略編の重大なネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
番吾の大敗と秦の再建
番吾の戦いで王翦が李牧・司馬尚に大敗し、亜光と田里弥を失った秦。桓騎の戦死に続く二度目の大敗は、秦国全体に暗い影を落とします。
しかし嬴政は諦めません。中華統一という夢を実現するため、秦は体制の立て直しに着手します。ここで中心的な役割を果たすのが、軍総司令・昌平君です。
昌平君の「三つの柱」
昌平君が献策した中華統一の大戦略は「三つの柱」と呼ばれる壮大なものでした。
第一の柱は、秦全土の領民の戸籍整備。正確な人口把握によって徴兵と補給の基盤を固める。始皇十六年にこの事業が完了し、秦は先の大戦で失った兵力以上の増員に成功します。
第二の柱は、増えた人口を基にした軍の再編成。番吾の大敗で失われた戦力を補い、複数方面での同時作戦が可能な軍事力を構築する。
そして第三の柱が、韓・魏・趙への同時攻略。一国ずつ潰すのではなく、複数の戦線を同時に展開することで、各国が連携して秦に対抗することを防ぐ。
この戦略に基づき、まず最も小さく軍事力の弱い韓への侵攻が開始されます。
韓への侵攻――飛信隊と騰軍
韓攻略の主力として選ばれたのは、信率いる飛信隊六万と、六大将軍の騰が率いる騰軍十万。合計十六万の大軍が韓に向けて進軍を開始します。
信にとって、これは中華統一戦争における最初の大仕事です。将軍として軍を率い、一国を滅ぼすという前例のない任務。飛信隊の面々も、この戦いの歴史的意義を感じ取っています。
騰は韓攻略の総大将として、冷静に全体の作戦を指揮。王騎将軍の副官として培った経験と判断力が、この大規模作戦を支えます。
南陽攻略――無血開城
韓への侵攻における最初の要所が南陽城です。南陽は韓の北部を守る重要拠点であり、ここを落とさなければ首都・新鄭への道は開けません。
しかし秦軍は力攻めではなく、巧みな策によって南陽の無血開城を成功させます。羌瘣の策が的中し、韓の将軍・博王谷に南陽を放棄させたことで、秦軍は一兵も損なうことなく南陽に入城。統一戦争の最初の戦果を、最小限の犠牲で手に入れました。
秦軍は南陽に半年間駐留し、補給線を確保した上で、いよいよ韓の首都・新鄭を目指して南下を開始します。
栄京平原の決戦
南陽を発った秦軍の前に、韓軍十九万が立ちはだかります。栄京平原での正面決戦です。
韓の将軍・楽暗と博王谷が率いる韓軍は、国の存亡をかけて全力で秦軍を迎え撃ちます。小国とはいえ、滅亡の危機に立たされた国の軍は必死です。
しかし飛信隊の奮戦が戦局を動かします。信が韓の副将・博王谷を討ち取ったことで韓軍の一角が崩壊。続く闘沙平原での戦いでも楽暗軍を完全に撃破し、新鄭への道を切り開きます。
信は将軍として着実に成長しています。飛信隊という精鋭を率いて敵将を討ち、戦局を決定づける。かつて歩兵の一兵卒だった少年が、中華統一の先鋒として歴史を動かしている。
韓の滅亡――「国か民か」
秦軍が新鄭に迫る中、韓王安は究極の選択を迫られます。徹底抗戦か、降伏か。
ここで浮かび上がるのが「国を守るのか、民を守るのか」という問いです。抗戦すれば国としての誇りは保たれるかもしれないが、民は戦火に巻き込まれる。降伏すれば国は消滅するが、民の命は守られる。
韓王安は苦悩の末、民を守る道を選びます。夏侯龍を処刑し、張宰相に秦への統治権譲渡の準備を命じ、新鄭東の東龍の門を開門。騰と信の前に降伏を示し、韓は滅亡します。
戦国七雄の一角が消滅する。中華統一の第一歩が、ここに刻まれました。しかしこの勝利は、単純な歓喜では終わりません。一つの国が消えるということの重み。そこに生きていた人々の暮らしが変わるということの意味。原泰久はこの瞬間を、勝者の凱旋ではなく、歴史の転換点として静かに描いています。
趙攻略への始動
78巻では、韓攻略を成し遂げた秦が次なる目標に向かいます。昌平君の「三つの柱」の第三段階――趙の完全攻略戦が紀元前229年に始動。
秦にとって趙は因縁の相手です。桓騎を討ち、王翦を破った李牧が健在である限り、趙は秦の中華統一における最大の障壁。騰の六将辞任という驚きの展開を経て、物語は趙との最終決戦へと動き始めます。
見どころ
統一戦争の「第一歩」が持つ重み
韓は戦国七雄の中で最も小さく弱い国です。しかしだからこそ、この国を滅ぼすことの意味は大きい。「中華統一」が言葉ではなく現実として動き出す瞬間。秦にとっても、読者にとっても、ここから先は後戻りできない道です。
信の成長の到達点
飛信隊六万を率いて一国の攻略に参加する信。歩兵から始まり、百人将、千人将、将軍と駆け上がってきた信が、ついに国を滅ぼす戦いの中心にいる。栄京平原で敵将を討つ姿には、天下の大将軍への確かな歩みが見えます。
「国を滅ぼす」ことの描き方
キングダムは戦争を華々しく描くだけの作品ではありません。韓攻略編では、滅ぼされる側の視点も丁寧に描かれます。韓王安の苦悩、民の不安、国が消えるということの意味。征服者の論理だけでは語れない、歴史の複雑さを原泰久は逃げずに描いています。
名シーン・名言
昌平君の「三つの柱」献策(73巻)
番吾の大敗で沈む秦の空気を一変させた昌平君の献策。中華統一への具体的な道筋を示すこの場面は、物語が新たなフェーズに入ったことを告げる転換点です。軍総司令としての昌平君の真価が発揮された名場面です。
南陽の無血開城(74巻)
力攻めではなく知略で城を落とす。統一戦争の最初の戦果が無血開城であったことは象徴的です。犠牲を最小限に抑えながら確実に前進する。この戦い方に、秦が目指す統一の形が表れています。
信の敵将討ち(76巻〜77巻)
栄京平原で博王谷を討ち取り、闘沙平原で楽暗軍を撃破する信。将軍として戦局を決定づける活躍は、天下の大将軍を目指す信の成長を体現しています。飛信隊の一体感と信の判断力が光る戦闘シーンです。
韓王安の決断(77巻)
国を守るか、民を守るか。韓王安が降伏を選ぶ場面は、単純に「負けた」では片付けられない深さがあります。一国の王として最後に何を守るのか。その答えが民であったことに、原泰久の歴史観が表れています。
騰の六将辞任(77巻〜78巻)
韓を滅ぼした後、騰が六大将軍の座を辞するという驚きの展開。王騎将軍の意志を継ぎ、六将として戦い続けてきた騰の決断には、深い意味が込められています。今後の物語における重要な転換点です。
キャラクター解説
信(李信)
飛信隊の隊長にして秦の将軍。韓攻略戦では六万の軍を率い、栄京平原での敵将討ちなど目覚ましい活躍を見せます。天下の大将軍という夢に向けて、着実に実績を積み上げている段階。中華統一戦争の中心人物として、今後さらなる活躍が期待されます。
騰
秦の六大将軍の一人。韓攻略戦の総大将として冷静に作戦を指揮し、韓の滅亡を実現。王騎将軍の副官として培った統率力と判断力で、秦軍を勝利に導きました。韓攻略後に六将を辞任するという決断が、今後の展開に波紋を広げます。
昌平君
秦の軍総司令。「三つの柱」という中華統一の大戦略を献策し、番吾の大敗からの立て直しを主導。戸籍整備から軍の再編、同時多方面攻略という壮大な計画は、昌平君の戦略眼なくしては生まれなかったものです。
羌瘣
飛信隊の副長。韓攻略戦では南陽の無血開城に貢献する策を立てるなど、武力だけでなく知略面でも成長を見せています。信の傍で戦い続ける彼女の存在は、飛信隊にとって欠かせないものとなっています。
韓王安
韓の最後の王。秦軍の侵攻を前に、徹底抗戦か降伏かという究極の選択を迫られます。最終的に民を守るため降伏を選んだその決断には、一国の王としての覚悟と、民への責任が表れています。
まとめ
韓攻略編は、キングダムという壮大な物語における大きな節目です。60巻以上にわたって描かれてきた嬴政の「中華統一」という夢が、初めて具体的な成果として実現する。戦国七雄の一角・韓が滅亡し、統一への第一歩が刻まれました。
この編の魅力は、勝利の高揚感だけでなく、「国を滅ぼすことの重み」を正面から描いている点にあります。韓王安の苦悩、民の運命、征服が持つ意味。原泰久は単純な勝利譚ではなく、歴史の複雑さと人間の葛藤を描くことで、キングダムの深みを一層増しています。
そして物語は、いよいよ趙攻略へと進みます。桓騎を討ち、王翦を破った李牧との最終決戦。司馬尚という未知の脅威。秦にとって最大の壁である趙をどう攻略するのか。史実では李牧の謀殺という悲劇的な結末が待っていますが、原泰久がそれをどう描くのか、今後の展開が非常に楽しみです。
さらにその先には、楚との大戦という最終局面が控えています。昌平君の動向、蒙武と項燕の激突、信が天下の大将軍になる瞬間。キングダムの物語はまだまだ加速していきます。中華統一という壮大な夢の実現を、リアルタイムで追いかけられる喜びを噛みしめながら、続きを待ちましょう。
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